前嶋拳人の雑だけど気になるブログ

前嶋拳人です。気分で面白いブログを更新します。

街角で拾った電球から流れる真夜中の賛美歌

前嶋拳人

こんにちは!前嶋拳人です。


昨日の夕暮れ時、アスファルトの割れ目に半分埋もれるようにして、見たこともないほど澄んだ色の電球が落ちていました。拾い上げて軽く振ってみると、中からはガラス同士が触れ合う音ではなく、どこか遠い銀河で録音されたような、かすかな風の音が聞こえてきました。私はそれを持ち帰り、書斎の古いデスクランプに取り付けてみました。スイッチを入れた瞬間、部屋を照らしたの光ではなく、目に見えないほど細い無数の透明な糸でした。

その糸を辿っていくと、驚いたことに私の指先から部屋の隅にある観葉植物、さらには窓の外を歩く野良猫の尻尾までが、ひとつの大きな波形を描いて繋がっているのが分かりました。私たちは普段、自分という個体が独立して存在していると信じて疑いません。けれど、この電球が放つ奇妙な波長の中では、私たちの境界線はひどく曖昧で、隣の誰かの溜息が自分の心臓を動かす燃料になっているような、不思議な相互作用が起きていました。

ふと、デスクの引き出しの奥から、使い古した一本の万年筆を取り出しました。それは文字を書くための道具のはずですが、先端からはインクではなく、小さな銀色の砂が絶え間なく溢れ出しています。その砂を手のひらに載せてみると、重力を忘れたようにふわふわと宙に浮き上がり、部屋の天井付近でゆっくりと渦を巻き始めました。銀色の砂は次第に形を変え、誰も見たことのない古代の星座を描き出し、静かな音色を奏で始めます。

それは、私たちが言葉と呼んでいるものの正体が、実は意味を持たない音の羅列に過ぎず、この銀色の砂が描く模様こそが本当の意志の伝達手段であることを示唆しているようでした。私は自分がエンジニアとして論理的に積み上げてきたすべての設計図が、この砂の嵐の前ではただの薄い紙切れに戻っていくのを感じました。

窓の外を見ると、都会のビル群が月明かりに照らされ、巨大な氷の彫刻のように透き通っていました。一人の配達員が自転車で坂を下っていきますが、その背中には大きな白い翼が生えていて、羽ばたくたびに街灯の明かりが順番に消えていきます。

私は、デスクランプのスイッチをそっと切りました。部屋は一瞬にして深い闇に包まれましたが、私の指先にはまだ、あの透明な糸の感触が微かに残っています。電球の中の風の音は、いつの間にか私の呼吸と完全に同期し、私は自分がこの部屋に座っているのか、それとも窓の外を泳ぐ銀色の砂の一部になったのか、判別がつかないまま静かな夜の中に溶けていきました。

壁にかかった時計の針は、もはや円を描くのをやめ、蛇のようにくねくねと曲がりながら、未知の次元へと続く階段を探しているようでした。